
生成AIの活用事例とか導入のコツ調べてみた〜結局実際みんな何に使っとんねん〜
はじめに
昨今、猫も杓子もChatGPTなどをはじめとした生成AIの話題でいっぱいですね…!
ラズレイトはWeb系のアプリケーション開発に強い会社ですが、今後生成AIを取り入れたシステム開発はマストになっていくと考えています。
実際、通常のシステム開発をさせていただいているお客様からでも、「何か生成AIでできないかなぁ…」といった声はよく伺っております。
そんな中、世の中では実際どんな活用事例があるのか社員間で調査するワークを行いましたので、せっかくなので情報としてまとめてみようと思います。
本記事では、単にLLMや画像生成AI自体を使ってアイディアを考えさせるとかではなく、サービスやシステムに組み込んでの利用例や、その過程などに注目してみていきます。

目的
まとめると以下のような目的のために、現在の潮流や実際の活用事例をキャッチアップしとこうという感じです。
- クライアント様に、貴社ではどのようなことができそうなど、ITの専門家として相談に乗り、一緒に考えることができるようになること。
- Webやアプリなど通常のシステム開発においても、生成AIを活用した機能などの組み合わせが必須になってくるであろうため、通常のシステム構築に付加価値をつけれるようになること。
事例
では早速いくつか調べた事例を紹介します。
調べてるうちに、単に事例を紹介するよりも、それがどんな戦略で行われたのか、時には失敗事例も大事だなと思いました。
表層的な事例だけなら沢山の紹介記事が出てくると思うので、その辺についての私の個人的な感想も添えて、いくつか参考になりそうなものを紹介してみます。
ちなみにこの記事は2024年4月に執筆しております。どうしてもこのジャンルは世の流れが早過ぎるため、将来的に風化してしまった頃にご閲覧いただいていたら申し訳ありません。
ベネッセホールディングス
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_jinzai/pdf/015_04_00.pdf

ベネッセさんでは、まず社内Chat GPTとして、Benessae Chatを作ったようですね。
ChatGPT自体は汎用性が高く便利なものの、入力情報を2次利用されるセキュリティ面の懸念や、利用履歴をモニタリングしたいなどで、Azure OpenAIなどを利用して、社内で使う専用のChatGPT環境を整備することはよくありますね。
その後ユーザー向けのサービスとして、子どもの興味を元に、アイデアやテーマを見つけることができる、小学生親子向け「自由研究お助けAI」のサービスなどをリリースしたようです。
生成AIがもてはやされた早くからの取り組みなので、直近の活用事例として目新しい感じではないのですが、フットワークの速さ、そしてこの資料通してさすが大きな会社さんならではの戦略立った進め方が印象に残りました。
この事例からの学びとして、生成AIを導入するにも、一気にドラスティックにあらゆるDXをするのは難しく、戦略を立てて段階を設けるのが重要だと感じました。

そもそも生成AIの利用を含めたDXを推進していくためには、経営者やCIO/CDOが明確な意思を持って全体戦略を立てて周知した上で、デジタル人材の採用や教育などを強い力で行なっていく必要があります。
その上で、事例以前に全体の戦略のサンプルとして、ベネッセさんの事例は参考になると思いましたので、まず一つ目としてご紹介してみました。
三豊市
続いては香川県の三豊市の事例です。
これはどっちかというと、教訓事例です…!
https://www.city.mitoyo.lg.jp/kakuka/shiminkankyou/eisei/2/chatGPT/index.html
これも2023年10月23日と少し前の情報ですが、同市では、6月から東京大学大学院工学系研究科松尾研究室と協力して、ChatGPTを用いた市民向けの「ゴミ出し案内」の実証実験を進めていたようです。
本格導入の条件として正答率99%を設定していた様ですが、2回目の実証実験の結果、正答率が94.1%に留まったことなどから、同市における「ごみ出し案内」業務には、ChatGPTを活用しないと決断されたそう。
私的な感想としては、ちょっと厳しすぎでは、、と思っちゃいました。
これも少し前の事例かつ公共系での利用なのでハードルが高くなっていたところがあると思いますが、やはりAIと「完全性」は相性が悪いように思います。
生成AIにはどうしても一見正しそうに間違った答えを返してしまう、ハルシネーションなどの問題もあります。
ただそれのみでAIはじゃあダメだとかいうものでもなく、人間だっていつも間違います。でもAIなら24時間動いてくれるなどの人にはできないメリットがそもそもあります。
AIに無謬性を求めるのでなく、解決したい課題は何なのか、KPIをどこに置くのか、を柔軟に設定して、今より便利になるために使うものを認識することが重要なのではないかと思いました。
さて、最近の事例を見に来たはずなのに、古い情報や謎の教訓的な情報を見せられ、そろそろ離脱しようとされてるかもしれませんw
ではそろそろ、個人的に私がいいやん!って思った事例を紹介していきます。
Z会:中学生向けにAIスピーキングレッスン機能を公開

https://aismiley.co.jp/ai_news/z-kai-ai-english-speaking-learning/
Z会は、「Z会の通信教育」中学生向けコースにおいて、AIとの対話型学習「AI Speaking」を新たに公開しました。
「AI Speaking」は、音声認識機能を用いて生成AIと英語のスピーキング練習を可能にし、中学生がいつでも好きな時間に英語学習ができる新機能です。
「AI Speaking」は、学校の教室での会話や飲食店での注文のやり取りなど、中学生の日常生活に基づいた会話練習を想定しています。
いやぁ…これ私が中学生の時に欲しかった笑
日本人って真面目だから読み書きはできるけど、話すのはシャイだからからっきしみたいな人多いと思います。
かくいう私もTOEIC820点とかなんとなくあるけど、全くスピーキングできないので、海外旅行した時はエクスキューズミーとディスワンプリーズのみで乗り切りました笑
Text to SpeechとSpeech to Textの技術は生成AI以前から成熟してきており、それに生成AIが得意な翻訳・解釈・文章作成などと組み合わせるとそりゃあパワー発揮しますよね。
Youtuberが音声でAIと喋れる的アプリがすげーって一時期よく取り上げてましたが、こういう人っぽく喋れる分野は今後も伸びていくんだろうなぁって思ってます。
訪問看護計画・報告書の生成
https://ewellibow.jp/kinou/ai-visiting/
在宅医療のDX支援サービス「iBow(アイボウ)」シリーズを開発・提供する株式会社eWeLLは、訪問看護計画書作成をはじめとする、国内初の生成AIによる在宅医療の次世代サービスの概要を発表したそうです。
既存の電子カルテシステムに、ボタンをポチッとするとインターネット上のデータとシステム内のデータを統合した上で、ChatGPTにかけ、訪問看護計画書が作成される様です。
人なら15分ほどかかる作業を3分ほどで完成できる様になり、作成時間は1/5短縮する。年間だと、1枚あたり12分×51名分×12ヶ月分で約120時間の削減とのこと。
弊社としては、なんかこういう既存のシステムに生成AIで便利機能を追加する的なことができないかなぁって思ってたりします。
業務で構築してほしいWebなどのシステムがあったとき、そこには業務特有の貴重なデータが存在して、既にUIとして活用できる画面があって、そこにビジネスの課題とアイディアを見つけて、ChatGPTなどの生成AIを手段として当てていくイメージです。
弊社にシステム開発をご相談いただく際には、ぜひ将来的に生成AI使ってこんなことしたいんだよねぇとか、なんか一緒にアイディア考えてくれません?とかぜひぜひお待ちしております。
調査で得た知見
いくつか個人的に参考になった事例を紹介させていただきました。
まだまだ紹介したい事例はあるのですが、長くなり過ぎるので一旦ここまでにしておきます。
調査にあたり、AIsmileyさんのニュース記事を沢山参照し、参考にさせていただきました。もっと多くの最新の事例を知るには参考になるかもしれないので、URL載せておきます。
https://aismiley.co.jp/ai_news/
ここからはそれらを踏まえた上で、生成AIを導入する上での知見の様なものがなんとなく見えてきたので、まとめてみようかなと思います。
生成AIって言ってるけど、メインストリームはやっぱりLLM
なんか生成AIを使えば業務がめっちゃDXするんちゃうか…?という漠然としたイメージがあるかもしれません。もちろんそれ自体はとても良いことで、なんかよくわからないからとりあえずスルーするみたいなことよりは、よっぽど素晴らしいと思います。
ただ、現実的に導入していくには、もう少し解像度を上げていく必要があるかもしれません。
実際生成AIとよく言いますが、ビジネスにおいて最も使いやすいのはChatGPTを始めとしたLLM(大規模言語モデル)であることが多いでしょう。
画像、映像、音楽生成の技術も凄まじい進歩がありますが、やはりビジネスにおいてこれまで貯めてきた文書データを生かして、解釈・分析して期待したい文章を作成する、ということができるLLMの利用を一番に考えるのがいいかもしれません。
もちろん他の技術もエンターテイメント分野や企画のイメージを作るなど有用ですが、システムに組み込むには、まずLLMの利用を考えるのが個人的にはイメージがしやすいのかなと感じました。
導入に有用そうな観点
システムの機能として導入するにあたり、どんな観点から発想していくのがいいのか考えてみました。
①データ活用
活用できるデータがないかまず考えます。人間では処理しきれなかった膨大なデータもよしなに要約・分析してくれるのがAIの良いところです。
社内のドキュメントなどのデータや、インターネット上のデータ、既存システムのデータで活用できるものはないか考えてみます。
②課題を見つける
生成AIは目的を実現するための手段に過ぎません。自社の解決したい課題は何か考えてみましょう。
発想としては大きく分けると、労働やお金や時間的なコストを下げる方向と、積極的に何か利益を生む方向の2パターンになるかと思います。
問い合わせ対応や資料作成の支援・提案、データの分析からこれまでなかった示唆を受け取るなどができるかもしれません。
③クリエーティブ制作
画像・映像の制作など、企画段階での補助やイメージの作成に役立たせることができないかも考えてみましょう。
段階を踏むこと
これはシステム開発全般にも言えますが、生成AIをちょっと入れていきなり劇的な効果を期待するとがっかりすることもあるかもしれません。
ベネッセさんの例でも出てきましたが、フェーズを切って戦略を立てる、またアジャイルに結果や状況を受け入れて改善をし続けることが大切になります。
いきなり高過ぎる目標を設定せず、仮説検証を繰り返し、効果を出していくのが良いでしょう。
AIと完全性は相性が悪い
三豊市の例でも出てきましたが、AIに高過ぎる目標を設定させ、無謬性を要求すると、これまた運用が難しい可能性が高いです。
AIと完全性はそもそも相性が悪いです。それでも膨大なデータを咀嚼したり、24時間働けるという、人間よりは優れた部分があるのも事実です。
少し雑な結果が出る可能性も受容し、メリットを最大限活かした運用をしていくのが良いでしょう。
それにはやはり何を解決したいのか、生成AIではどんなことが解決しやすいのかを考えて、利用シーンを検討しましょう。
おわりに
活用事例を紹介するはずが、そこから得られた示唆が多く、それを紹介する記事になってしまいました笑
正直に言うと、弊社も生成AIの専門家という訳では全くないのですが、これからのシステム開発をする上で生成AIの利用は必須になってくると考えています。
ただ、クライアントの課題を解決するためには、別にLLM自体を開発する必要はそれほどないと思っていて、既存のモデルを利用したり、必要であってもファインチューニングしたりRAGを組んだりなど、利用するためのリテラシーをもち、どういう価値を作っていくかの方が大切だと考えています。
お客様とシステムの要件を検討する上で、「あ、そういえばここで生成AI使ってこういう機能実現できそうじゃないですか??」など、あくまでシステム企画の検討の一つとして、一緒の目線でうんうんと考えながら、伴走して良いアイディアを考えていけたらいいなと夢想しております。
システム開発をお願いしたくて、将来的には生成AIの活用なども一緒に考えてくれるベンダーがいたら最高なのになぁ…とか思っていただけるお客様がいたら、ぜひぜひラズレイトにお問い合わせください!